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Do I love you

作者:村島モモ

 

――― 遅いっ! 遅すぎる!
携帯に表示された時計とにらめっこしていた私は、目の前のドアが一向に開く様子がないことに耐え兼ね、チャイムを鳴らした。「はい」、聞き慣れた声に、私は怒りの感情を精一杯追いやり、「史穂です」と名乗る。その声の主は、「あら、史穂ちゃん、いらっしゃい」と迎えてくれた。「昌剛ならまだ寝てるわ。どうぞ上がって」、その言葉に甘え、私はお行儀よくあがらせてもらう。自分の家の次に、勝手を知る家だから、アイツの部屋がどこかを尋ねる必要はない。それはおばさんもわかっているようで、私を出迎えるとすぐ、リビングに戻って行った。

 

階段を駆け上がっていく音は次第に大きくなっていく―――。
ガチャ。ドアを開けるなり、私は叫んだ。
「起きろ――! マサーーー!!」
「うわ、うるせ。黙れーーー」
「起きろ! 起きろ! 起きろーーー!!」
起きろ、という言葉に逆らい、布団にもぐりこむその男を私はポカスカ殴った。
1時間近く待たされた苛立ちも加わり、その音はだんだん重い音に変わっていく。
「うるさい、黙れ、黙れ、黙れーーー!!」
「もう、起きてよ。今日は買い物に一緒に行くって言ったじゃんか」
こうなったマサはたぶんもう起きない。
「そんな約束はしてない、今日は日曜だ、休ませろ」
「あ、そう。じゃ、いいよ」
約束を忘れられたのは、さすがに寂しかった。
だから、私はドアの前で立ち止まると、「マサのバカぁ!!」と大声で怒鳴ってやった。
 

しっかりと意識を取り戻したマサから電話がかかってきたのは、それから2時間後のことだった。
「ぁー、えっと、もしもし? あ、あのさ、わ、悪かったよ。ま、まだ1時じゃねぇか、今からでも」
10時に待ち合わせをしたのに、マサが私のことを思い出したのは、1時。
これで怒らない人がいたら会ってみたいものだ。
「な、ごめん、ほんとごめん、許してください。ね、史穂ちゃん」
こういうときだけ、「ちゃん」づけをするマサ。
都合の良い奴、と思うのに、ちょっとだけ嬉しいと思ってしまう自分が悔しかったりする。
「ほら、なんとか言えって」
「黙れぇ、って思い切り叫んだのあんたでしょうが」
「だ、だから、謝ってるだろ? 悪かったって!」
「……もういいよ、昨日は大会で疲れてんでしょ、寝てなさいよ」
それは優しさのつもりだった。
一緒に出かけたい気持ちはあったけど、マサが疲れているのは知ってたから。
「いや、けど、最近全然行けてなかったし」
「別にぃ~、私たち付き合っているわけでもないしぃ~」
なのに、素直になれなくて……。
「あぁ、そうかよ! わかった! ならいい!」
あ……。
一方的に切られた電話をしばし見つめる。
こういうとき、“可愛い”反応は喜ぶことなんだろうな、と思う。
 

「マサー! 昨日はごめん」、そう軽く謝るつもりだった。
なのに……、マサはなぜか知らない女性と親しそうに笑っていて。
私はのど元まで出かけた言葉を飲み込んだ。
「えー、中村さんもあの番組好きなんですかー!」
マサと親しそうに笑う女性は、――私と違って――清楚で、可愛らしいという言葉がよく似合う人だった。
 

マサと喧嘩してから2週間。
彼女は、なぜか常にマサの隣にいて、私は話しかけるタイミングを見失っていた。
正直面白くはなかった。
けど、マサが私といるより楽しいっていうなら、応援してもいいかな、ってそう思ってた。
それなのに……。
 

「あははは、楽勝♪楽勝♪」
放課後の教室で机に座って話す彼女のトーンは、マサと話すときのそれより、数段低くて……。
私はとっさに体を隠した。
「あと1週間もあれば十分だよ☆」
彼女の声しかしないってことは、携帯で話しているってことだろうか?
「アイツさ、幼馴染が男勝りな女らしくて、清楚系の女ってのに飢えてたらしいの」
……分かりやすく話してくれたことに感謝する。
彼女が今ターゲットにしている人で、男勝りな幼馴染を持つ、それは―――マサのことだ。
「あはは、ほんとバカだよね! あんな男、誰が相手にするかっての!」
男勝りな私は、頭に血が上ったら、それを自分では止められない。
ズカズカズカと音を立てて近付いていく。
その女は、まさか今の会話が聴かれていたとは思わなかったらしく、私の方に視線を向けたまま固まっている。
「さっきの会話、なに!?」
「な、なんのことですか?」
この状況でシラを切ろうなんて。
「誰がバカな男だって!?」
私が男勝りなのは事実。マサがバカな男なのも事実。
だけど、別の女にマサを「バカな男」呼ばわりされるのはムカつく!
「な、なんのことかわかりません」
「はぁ!!?」
「…………」
「もうなんとか言ったらどうなのよ!!」
「…………」
悔しさやら、悲しさやら、怒りやら、心の中がぐちゃぐちゃになっている。
「聞いてんの!? なんとか言いなさいってば!!」
だから、気付けなかった。
廊下に体を向けているこの女の目に何が映ったのかを。
知らなかった。
振り上げたその手が
「やめろ!! 史穂!!」
マサの頬に当たってしまうことを。
「マサ…? どうして…」
「昌剛くん…? 昌剛くん! 大丈夫!??」
「あぁ、大丈夫」
「こ、これは、私が悪いんじゃなくて!」
先に手をあげたのは私。信じてもらうにはあまりに分が悪いシチュエーションだった。
「なんでだよ!!? 手まであげる必要ないだろ!? 元々こえぇ顔がますます凶悪になってんぞ!」
「は、はぁ!? 意味分かんない!!」
どうしてここで顔の話になんのよ!?
「ばっかみたい、かっこつけちゃって!! あんた、この女のこと好きなの!?」
「ば、ばか。好きとか関係ないだろ!!」
少し赤面した様子で否定するマサ。
「……私は好き」
「「はぁ!!?」」
まさかの一言に、マサと声が重なった。この場に及んで、この女……!!
「だから、私は昌剛くんのことが好き。でも、史穂ちゃんもそうだと思ってた。けど、違うんだ。好きな人に普通手なんてあげないもんね、あの時止めようと思ったら止められたはずなのに」
「いや、瞳美ちゃん、これは…」
「……そうね、コイツのことなんて別に好きじゃないよ! 止めようと思えば止められた、そうかもね!」
否定するのがバカらしかったのかもしれない。
マサのために腹を立てたのが急に虚しくなっていた。
「ね、昌剛くんは私のこと好き?」
「いや、ちょっと待って」
「ね、好き?」
「え、あ、うんっと」
「あぁ、そうなんだ!! わかった、もうじゃ2人して仲良くしてれば!!?」
勝手にして、それが1番素直な気持ちだった。
 

マサ達のもとを離れると、堪え切れなくなった涙がぽとぽとと頬を伝う。
寂しいんじゃない、悔しいの。自分の行為が裏目に出てしまったことが。
素直になれないことが。情けないの。
その時。携帯がピコンと音を立てる。
画面を見遣ると、「スタンプを送信しました」という文字。
電話でもなく、自分で打ったメッセージでもなく、マサが送ってきたのはスタンプ。
それがなんだか妙に寂しくて。私は携帯の画面を開くことができなかった。
ピコン。私からの反応がないことを不安に思ったのか、マサはもう1つスタンプを送信する。
寂しい思いを抱えたまま、私はLineの画面を開くことにする。
そこにあったのは―――、可愛い少年のスタンプ。
「ごめん!!」、頭を下げるそのキャラの左隣には、そう表示されていた。
なぜかスーッと気持ちが楽になった私は、小さく「ふふっ」と笑ってしまう。
2つめのスタンプは、きょろきょろと辺りを見回している猫のスタンプだった。
彼女と一緒にいるのではなく、私を探しているみたいだ。
ピコン。最後に届いたスタンプに首を傾げる。だって、それは……。
 

「あ、いた!」
しばらくして、マサが姿を現す。肩で息をしているところを見ると、走って来たみたいだ。
「なに、泣いてんだよ、バカ」
私の目の奥が赤くなっているのを見たマサは、冗談めかしてそう言った。
「泣いてなんか、ないわよ、バカ」
「ごめん、さっきの、俺が出すぎた真似して」
「好きなんでしょ、あの女のこと。だったら、いる場所間違えてんじゃない?」
ほんとはマサが来てくれて、凄く嬉しいのに……。やっぱり素直になれない。
「けど、あれは事実だろ、顔が怖いの」
「まだ言うかーーー!!」
「……ごめんな。お前、俺のために怒ってくれたんだろ?」
「え……」
「聴こえちゃってさ。彼女の最後のセリフ。で、お前の態度見てて、あー、そういうことなんだろうなって」
だから、マサは送ってきたんだ。「ありがとう」って笑顔のスタンプ。
「けどさ、手出しちゃダメだよ。お前が悪くなっちゃうだろ?」
「うん……」
ようやく少しだけ素直になれた。
「……痛かった? ごめんね」
「いつも殴ってるくせに、謝ったの初めて」
「いつも殴ってるはよ・け・い!!」
一瞬の間をおいて、2人揃って笑い出す。いつもの私たちだ。
「……けど、怒ってくれなくていいよ。だって、彼女の賭けは失敗だから」
「それって……」
「俺が好きなのは、お前だけだから」
真剣な表情で告げられた言葉。
「あ、そ」
「あ、そ。じゃなくて、え!? お前は?」
“可愛い”反応が返ってくると思っていたんだろうか、まさかの反応に、マサは慌てていた。
「…し~らない。マサ、今度の日曜、空けときなさいよ! 買い物に付き合ってもらうんだから」
いつか送ろう。「大好き」のスタンプ。素直になれない私には、最適の感情表現なんだから。



22 Good
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